需要はある? 不足している? 地方の弁護士事情

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「地方で弁護士の需要はある? 不足している?」

「弁護士の地方での就職状況は?」

「都会で働く場合と地方で働く場合の違いは?」

・・・という質問を受けることが最近多くなってきました。

そこで今回は、「地方の弁護士事情」を考えていきます。

弁護士は地方で不足している? 地方の弁護士需要は?

弁護士過剰といわれる昨今、地方では弁護士が不足しているのでしょうか?

弁護士需要はあるのでしょうか? 地方にはまだまだ弁護士の需要があるという意見の一方で、地方もすでに飽和状態で受け皿がないという意見もあります。

長野県で弁護士をする宮下先生によると、2010年1月の長野県の弁護士登録数は165名であったが、1年後の2011年1月には17名増え、弁護士登録者数は182名になったようです。

これはわすか1年で約1割増えたということであり、弁護士急増の影響が地方にも出てきたことをうかがわせます。

数年もすれば長野県も300名近い弁護士数になることは確実とのことです。

その影響からか、秋の臨時総会では圧倒的多数で「司法試験合格者1000名決議」が可決されるなど、地方にも弁護士急増の危機感、不安感が表れています。

その他にも、地方で弁護士活動をしていると、会社を破産、清算などの仕事をした際に地方の経済規模の収縮と人口減少を肌で感じるとの意見もあります。

ポジティブな意見では、 「これまで近所に弁護士がいなかった地方(地方のさらに地方)なら需要はある。

しかし地方都市はすでに飽和状態」 「兵庫県の某市(15万人)で開業した弁護士さんは年収1,000万円くらい稼いでいる。

ただ前提条件として営業努力はしっかりされています。

いままでのように殿様商売でやっている弁護士は淘汰されていくでしょう」 といった声がありました。

地方の弁護士就職事情は?

まず前提として、修習生の希望就職地は東京、もしくは大阪の大都市圏が圧倒的多数です。

その理由としては、

・大都市圏は大規模法律事務所が多数あり、募集人数もその分多いため(大都市圏に比べると地方は募集自体が少ない)

・縁も所縁もない地方に住むことがネック

・大都市圏は人口が格段に多いので、ニッチ分野に特化しても食べていける

などが挙げられます。

日本弁護士連合会(JFBA)の統計情報「弁護士会別弁護士数(2016年)」によると、全国の弁護士37,680名中、東京三会に所属する弁護士は17,565名と、東京一極集中が鮮明となっています。

地方では求人情報自体が少ないですが、地方での就職を諦める必要はありません。

弁護士の今村幸正先生はご自身のブログで以下のようにアドバイスをしてくれています。

弁護修習先の指導担当弁護士は、修習生の就職について最も気にかけてくれる存在の一人です。就職のことも含めて相談してみてはいかがでしょうか。その地域で就職したい、ときちんと伝えれば、他の弁護士に働きかけてくれることもあります。また、どこの事務所に就職すべきではない、という情報も教えてくれることもあるでしょう。 他に、地方では、弁護修習先の事務所に就職する、という例が非常に多いようです。その場合も、最初から「キミ、採用」となるのではなく、「仕方ない。キミも悪い奴じゃないから採用してやろう」というパターンが多いようです。修習先が良い事務所で、かつ、修習生を雇えるだけの余裕がありそうなら、雇ってくれませんか、とアピールしておくべきでしょう。
修習生に対しては、非常に寛容な弁護士が多いです。どこかで会ったら、事務所に遊びに行っても良いですか? と素直にきいてみても良いでしょう。雇ってあげることはできないけど、遊びに来るなら歓迎だよ、と言ってくれることが多いでしょう。 なんだ、雇ってくれないのか、とあきらめてはいけません。その地方での情報(どの事務所が人が足りなくて困っているかなど)を教えてくれることもありますから、色々な弁護士とコネクションをつくることは非常に有効です。

地方での就職活動~司法修習生の就職活動について考える~

都会弁護士と地方弁護士の違いは?

大分県で開業されている弁護士の河野聡先生のコラムで、都会の弁護士と地方の弁護士の違いが書かれています。

都会の弁護士は地方の弁護士のことを「泥臭い」「柔軟性がない」「能力がない」「先進性がない」というイメージで見ていたり、明らかに見下した態度をとってくることもあるようです。

一般市民の方も「都会の弁護士のほうが地方の弁護士よりも優秀」と思っているのではないか、とのことです。

しかしそれらはあくまで「イメージ(偏見?)」で、実際は都会の弁護士と地方の弁護士で能力が違うということはまったくないといいます。

むしろ、ゴミ問題や外国人労働者問題、多重債務者の問題は地方のほうが深刻のようです。

違いといえば、事件処理の仕方が都会の弁護士のほうがビジネスライクだという程度とのことです。

都会の弁護士と比べて何の遜色もないと判断し、弁護士過剰の大都市圏よりも地方で弁護士をやったほうが人々のためになるのではないかと考え、大分県での会場にいたったそうです。

詳しくは、ぜひ以下のコラムをご覧ください。

「田舎弁護士」の気概と落とし穴

まとめ

「地方の弁護士事情」についてご紹介してきましたがいかがでしょうか。

就職、転職をお考えの際には「地方」も選択肢の1つに入れてもいいかもしれません。

この記事が参考になれば幸いです。

弁護士の急増、増えすぎ・・・「弁護士過剰問題」の弊害と解決方法

 

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近年、弁護士の急増、増えすぎが問題になっています。 いわゆる『弁護士過剰問題』。

今回はその問題点と解決方法を考えていきます。

弁護士過剰問題とは?

弁護士過剰問題とは、弁護士の数が急激に増えたことにより需要と供給のバランスが崩れるなどのさまざまな弊害が生じる社会問題を指します。

急増の原因は2002年に閣議決定された「法曹3000人計画」とされています。

「法曹3000人計画」は裁判員制度の導入を見据えた上での司法制度改革でしたが、結果的に弁護士の質の低下や就職難、法学部、法科大学院の人気低迷・定員割れ、着手金詐欺の増加などの問題を招いてしまいました。

これらの状況を受けて政府は、2012年8月5日に司法試験合格者数の目標を現行の年間3,000人から2,000人に引き下げる方針を固めました。

さらに2013年には計画自体の方針を見直すことを決定しました。

弁護士過剰問題の弊害

前述のように、弁護士過剰問題の弊害はさまざまあります。

まず第一に挙げられるのは、弁護士の増加による「就職難」です。

やっとの思いで司法試験に合格しても「就職先がない」という状況が各地で発生しています。

巷には、 「弁護士過剰で就職すら難しくなってしまった」 「かつては年収も高かったが、現在は昔と比べて厳しい状況」 「弁護士初年度は(弁護士としての)収入はゼロだった」 といった厳しい声が溢れています。

弁護士の就職難については以下の記事で詳しく掘り下げているので、合わせてご覧ください。

bengo4.hatenablog.com

また就職難の弊害で、昔は敬遠されていた所謂「スジの悪い」案件の多い事務所にも新人弁護士が集まるという現状もあります。

司法修習中の借金や家族を養わなくてはならないなど、背に腹はかえられぬ実情もあるでしょう。

その他にも、弁護士が急増しても案件数が増えるわけではないので、その分1件あたりの報酬を高くせざるを得ない(もしくは弁護士業務の質が下がる)といった問題も発生しています。

弁護士過剰問題の解決方法は?

弁護士過剰のこの時代を生き抜く方法の1つとして、企業内弁護士(インハウスローヤー)という働き方にも注目が集まっています。

一般企業に就職し社内弁護士として働き始めるケースが年々増加しています。

日本組織内弁護士協会(JILA)の統計資料「企業内弁護士数の推移(2001年〜2016年)」によると、2001年にはたった66人だった企業内弁護士が、2016年にはなんと1,707人にまで増加しています。

企業内弁護士が年々増えている背景には、弁護士過剰による就職難、法律事務所の長時間労働の問題などがあります。

詳しくは以下の記事で掘り下げていますので、ぜひ合わせてご覧ください。 

bengo4.hatenablog.com

このように、企業内弁護士の増加は、弁護士過剰の現代を生き抜く方法を考えた末の結果ともいえるでしょう。

また企業内弁護士の増加に伴い、社会人になると出会いがないという問題もあるようです。解決策のヒントとしては以下の記事が参考になります。

renaibu.jp

司法試験に受かっても職がない? 弁護士の就職難の嘘と実態

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「弁護士の就職難って本当なのだろうか?」

「弁護士になったのに職がないなんてことがあるのか?」

・・・という質問を受けることが最近多くなってきました。

そこで今回は、「弁護士の就職難の実態」と「弁護士の就職難は嘘だ、という意見について」、そして「若手弁護士が就職難を乗り切る方法」をご紹介します。

弁護士の就職難の実態は?

では実際に弁護士の就職難の実態はどのようになっているのでしょうか?

2015年5月の日本経済新聞の記事「新人弁護士、かすむ未来 事務所入っても少ない仕事」で、とある新人弁護士を例に就職難の実態が紹介されています。

借金をして法科大学院に通いやっとの思いで司法試験に合格したが、なんとか就職できたのは小さな法律事務所。 月の給料は20万円台で歩合給はなく、個人で仕事を請け負うのも禁止。 その他にも問題があり退職したものの、「コネが命」といわれる弁護士業界では人脈がないとなかなか仕事にはありつけない上に、奨学金や司法修習中の借り入れおよそ1,000万円はまだ残っている。

その新人弁護士の男性は、

「周囲を見ても、厳しい環境で我慢して働いている若手弁護士は多い」 「自分が弁護士になれたのは司法制度改革で司法試験の合格者が増えた恩恵だが、仕事もないのに弁護士を増やしすぎている」

と厳しい現状を語っています。

2012年4月の日本経済新聞の記事「弁護士、深刻さ増す就職難 日弁連は勧告歓迎」では、 「新人弁護士の厳しい就職状況を鑑みて、一般企業に就職することにした」 「60以上の法律事務所を受けて、ようやく内定をもらえたのは1つ」 という声が紹介されています。

その他にも、 「法律事務所の採用数が少ない」 「年収300万円以下の弁護士も珍しくない」 「収入があるだけまだマシ」 「“即独”や“ノキ弁”にならざるを得ない弁護士も多数」 「実入りのいい仕事は古参弁護士が独占」 「司法研修所での生活費が借金になっているケースが大半で、さらに弁護士会費等が毎月5万円かかる」 「法学部、法科大学院の人気が低迷、定員30人に入学者3人というケースも」 という厳しい現状を訴える声が挙がっています。

この厳しい弁護士の就職難の背景には、2002年に閣議決定された法曹3000人計画に端を発した「弁護士過剰問題」があるようです。

弁護士の就職難は嘘? 都市伝説?

一方で、「弁護士の就職難は嘘だ」という意見もあります。

2015年6月の東洋経済オンラインの記事「データで検証!「弁護士は食えない」のウソ」では、法律事務所に就職した若手弁護士に「法科大学院の同級生や司法修習の同期にこの定説(就職難や低収入、多額の負債など)を地で行くような弁護士がいるか」と聞くと、 「少なくとも自分が知る範囲では心当たりがない」 「かわいそうだの、食えてないだの言われるのは心外だ」 という答えが返ってくると紹介されています。

詳しくは上記の記事を参照していただきますが、弁護士の厳しい実態を裏付けるとされる統計を検証し、「弁護士の就職難」に対するさまざまな反論を行っています。

その他にも、

「法律事務所のみの求人倍率は概ね0.7~0.8倍と1倍を割る水準。このところ求人を増やしている企業の法務部も含めれば、求人倍率は軽く1倍を超えてくる。法律事務所以外はイヤという人を除けば、むしろ売り手市場だ」 「就職以外にもOJTの機会を得るチャンスはある。弁護士会活動に積極的に参加すれば、即独でも上の世代の弁護士と知り合えて下請け仕事をもらう機会もある。労働環境が劣悪なブラック事務所に就職するくらいなら即独や早独の方がマシ」(65期の弁護士)

という意見が紹介されています。

しかしながら、さらに一方では「弁護士の就職難に対する反論」への反論もあります。

弁護士の武本夕香子先生はご自身のブログでこのように指摘されています。

彼らに言わせれば、「弁護士を募集しても応募がない」と嘆く弁護士もいるのだそうで、弁護士の就職難は「都市伝説」、就職難の根拠とされる数字には「マジック」があり、「登録抹消」の実態には裏があるとのことのようです。「そもそも、弁護士は就職する必要があるのかという疑問もあ」るのだそうで、「司法研修所を出ているのですから、「就職しないと仕事ができないというのもおかしなお話」なのだそうです。   「弁護士を募集しても応募がない」と言う弁護士が存在したとして、だからと言って弁護士の就職難が存在しないとの結論を導けるわけではありません。 大半の弁護士が「経費削減のため弁護士を辞めさせることはあっても新人弁護士を募集する余裕はない」「弁護士を1名募集すると、100名以上集まってくるので困る」「修習生があまりにも気の毒で、就職の話題はタブーである」等々と言っていますが、中には、「弁護士を募集しても応募がない」との稀有な弁護士がいることもあり得るからです。 ただ、もし、「弁護士を募集しても応募がない」と嘆く弁護士を見つけたら、即刻、弁護士会に情報提供して戴きたいと思います。どこの単位会も就職先のない修習生で溢れかえっているからです。

そして先日行われた就職説明会では、100名近い修習生に対して、法律事務所が6つ、法務人材の採用を希望する一般企業が2つというお寒い状況であったことを紹介。

また司法改革以前は「弁護士会費を節約するために弁護士登録を遅らせる」こと自体がなかったこと、つまり、「経費節減(かつてはそんな発想自体なかった)のために登録を遅らせる」ということ自体が弁護士の需要のなさを物語っていると指摘されています。

その他にも、 「「結局は就職できているではないか」という主張が盛んにされているが、弁護士過剰の中で新人弁護士は旧司法試験時代よりもはるかに希望条件を下げて就職しているので、そのような主張は妥当ではない」 という意見が散見されました。

新人弁護士が就職難を乗り切るには?

「就職難」「稼げない」といわれるこの厳しい状況を新人弁護士が乗り切るにはどうしたらいいでしょうか?

新人弁護士が就職難を乗り切る方法を2つご紹介します。

(1)法律事務所に登録だけさせてもらう

法律事務所に就職できなかった場合は、法律事務所に弁護士として登録だけさせてもらうのも1つの方法です。

いわゆる「ノキ弁(軒先弁護士)」で、事務所のスペースを間借りして弁護士業務を行います。

まれに法律事務所のおこぼれ仕事をもらえることもありますが、独立扱いなのでノキ弁に給料はなく、自分で顧客を探して収入を得なくてはなりません。

またその収入の中から法律事務所の賃料などの経費を払う必要があります。

(2)地方弁護士になる

この就職難を生き残るには、「地方弁護士」が狙い目です。 弁護士の就職難はみんなが都心の法律事務所を希望しているからであって、「場所を選ばなければ十分に稼げる」といわれています。

都心ではそこらじゅうに法律事務所の看板を見かけますが、地方では一番近くの弁護士に会うだけでも車で何十分もかかるということはザラです。

田舎暮らしに問題がなければ就職先はいくらでも見つかるでしょう。

まとめ

今回は「弁護士の就職難」を掘り下げてみました。

いくら「就職難、稼げない」といわれても、弁護士は社会にとって必要不可欠な存在です。

ぜひあなたに最善な職場や働き方を見つけていきましょう。

法律事務所? 企業内弁護士? 「年収」から考える弁護士の転職

近年、積極的に企業内弁護士(インハウスローヤー)などの法務人材の中途採用を行う一般企業が増えています。

その背景には、事業拡大や海外展開などの業務内容の高度化、法改正への対応の増加などがあります。

法務職は専門性が高く中途採用に頼らざるを得ないため、事業会社への転職を考えている弁護士の方にとっては好機となっています。

では実際に転職活動を開始するにあたって、気になることの1つに「年収」があると思います。

そこで今回は、転職の際に気になる「弁護士の年収」にフォーカスして掘り下げていきます。

また「法律事務所勤務と企業内弁護士、転職するならどちらがいいのか?」ということについても比較検討していきます。

弁護士の平均年収(2014年調べ)

 

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こちらは日本弁護士連合会(日弁連)が2014年に実施した「弁護士実勢調査(弁護士センサス)」から得た回答結果です。

上記の図のように「弁護士の平均年収」は、

・200万円未満:221人

・200万円以上500万円未満:238人

・500万円以上750万円未満:386人

・750万円以上1,000万円未満:291人

・1,000万円以上1,500万円未満:490人

・1,500万円以上2,000万円未満:319人

・2,000万円以上3,000万円未満:494人

・3,000万円以上5,000万円未満:422人

・5,000万円以上7,500万円未満:187人

・7,500万円以上1億円未満:63人

・1億円以上:88人

となっています。

弁護士の平均年収で多いのは、上から順に「2,000万円以上3,000万円未満:494人」「1,000万円以上1,500万円未満:490人」「3,000万円以上5,000万円未満:422人」ということがわかります。

弁護士の平均年収【年度別】(2014年調べ)

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こちらも日本弁護士連合会(日弁連)が2014年に実施した「弁護士実勢調査(弁護士センサス)」による「年度別の弁護士の平均年収の推移」です。

上記の図のように「年度別の弁護士の平均年収」は、

・2006年:3620万円

・2008年:3389万円

・2010年:3304万円

・2014年:2402万円

となっています。

弁護士の平均年収は依然高い水準にありますが、年々下降傾向にあることがわかります。

弁護士の平均年収低下の背景には、弁護士の急増による就職難や、「ノキ弁」「即独」「携弁」など働き方の多様化により低収入の弁護士が増えたことなどが挙げられます。

しかし上記のように弁護士の平均年収は依然高い水準にあるので、高収入の弁護士と低収入の弁護士の2つに大きく分かれるようになってきているのが現状でしょう。

弁護士の平均年収【経験年数別】 (2014年調べ)

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上記の図のように「経験年数別の弁護士の平均年収」は、

・5年未満:796万円

・5年以上10年未満:1679万円

・10年以上15年未満:2285万円

・15年以上20年未満:2971万円

・20年以上25年未満:4101万円

・25年以上30年未満:4290万円

・30年以上35年未満:4750万円

・35年以上:3413万円

となっています。

経験年数を重ねるごとに年収は上がっていき、30年以上35年未満の4750万円がピークになっています。

企業内弁護士の平均年収(2016年調べ)

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 こちらは日本組織内弁護士協会(JILA)が2016年に実施したアンケート調査の回答結果です。

上記の図のように「企業内弁護士の平均年収」は、

・250万円未満:0%

・250万円以上500万円未満:9.6%

・500万円以上750万円未満:30.5%

・750万円以上1,000万円未満:24.1%

・1,000万円以上1,250万円未満:12%

・1,250万円以上1,500万円未満:9.4%

・1,500万円以上2,000万円未満:6.1%

・2,000万円以上3,000万円未満:3.7%

・3,000万円以上5,000万円未満:1.6%

・5,000万円以上:2.9%

となっています。

500万円以上750万円未満が30.5%、750万円以上1,000万円未満が24.1%と、500万円〜1,000万円の年収範囲が一番多くなっています。

ちなみに企業内弁護士の平均年収は1,143万円となっています。(2016年調べ)

法律事務所勤務と企業内弁護士、年収を基準に転職を考えるなら?

法律事務所勤務の弁護士の場合、企業法務を扱う事務所なのか、知財や一般民事案件を主に扱う事務所かなど、法人によって給与体系は大きく異なります。

またパートナーになれるかどうかでも収入が大きく変わってきます。

一般企業に勤める企業内弁護士の場合、法律事務所勤務の弁護士よりも平均年収は低い水準にあります。

しかし法律事務所よりも法人による年収の差が少なく、法務人材の採用を強化しているのは上場企業などの大手企業が多いため、福利厚生や賃金制度がしっかり整備されています。

弁護士全体の内、4.5%が企業内弁護士といわれていますが、年収以外にも「ワーク・ライフ・バランスの考慮」や「ビジネスに携わりたい」という理由で事業会社に転職することもあります。

 

bengo4.hatenablog.com

また「弁護士ならではの仕事がしたい」のか「ビジネスの課題解決に取り組みたい」のかによっても、法律事務所を選ぶか企業内弁護士を選ぶかが変わってくるでしょう。

近年急増中!? 弁護士が法律事務所から企業に転職する理由

「弁護士が転職する理由や動機はなんだろう?」と気になったことはありませんか? 他の弁護士さんの転職理由や転職事例を知ることで、ご自身の転職の参考になることもあると思います。 そこで今回は、弁護士が転職する理由や事例をご紹介します。

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法律事務所の弁護士が企業に転職する理由3つ

近年、法律事務所に所属する弁護士が「企業内弁護士(社内弁護士)」に転身するケースが増えています。 それには一体どんな背景があるのでしょうか? 企業に転職する弁護士が多い理由を3つご紹介します。

(1)法律事務所の周辺環境の変化

法律事務所から企業に転職する背景の1つとして、法律事務所周辺の環境変化が挙げられます。

変化1:リーマンショック

変化の1つは、2008年9月15日にアメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻したことを機に発生した世界的金融危機、「リーマン・ショック」です。 2008年9月15日にアメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻したことを機に発生した世界的金融危機、「リーマン・ショック」です。 リーマン・ショックは、銀行から融資を受けている多くの会社の経営を悪化させました。そして、それは法律事務所も無関係ではありませんでした。 法律事務所のメインクライアントの多くは企業なので、案件数が激減し経営を圧迫。人材採用を中止する法律事務所や、日本から撤退する外資系法律事務も出てきました。 これらの影響により、企業への転職を考える弁護士が増えたという背景があります。

変化2:東日本大震災

変化の2つ目は、2011年3月11日に発生した「東日本大震災」です。 東日本大震災の経済への影響は大きく、日経平均終値は、ブラックマンデーリーマン・ショックに次ぐ過去3番目の下落率を記録しました。 その影響で日本経済は停滞し、多くの企業の経営状況が悪化。それにより法律事務所の経営にも更なる悪影響がありました。

変化3:弁護士の急増

変化の3つ目は、「弁護士の急増」です。 「弁護士過剰問題」とも言われており、「難関の司法試験を合格しても就職先がない」という状況が発生しています。 2012年の12月の段階で、司法修習修了者のうちの約26%が弁護士未登録となっています。 法律事務所が弁護士求人を出すと応募者が殺到するほど就職難が深刻化していることにより、企業への就職を目指すケースが増えてきています。

(2)長時間労働の問題

日本弁護士連合会の調査によると、弁護士の勤務時間は一般的なサラリーマンよりも長い傾向があるそうです。 8時〜10時に事務所や裁判所に出勤し18時〜22時くらいに退勤するケースが多いですが、毎日のように深夜まで働いている人もいます。 休日は一般企業と同じように土日休みの法律事務所が多いですが、一般の方からの相談も受け付けていたり、複数の案件を抱えている場合は、土日に働くことも多くなります。 総じて、大半の弁護士の労働時間は長めになっています。 このような理由から、ワーク・ライフ・バランスを考えて「一般企業に転職したい」と考える人もいます。

(3)事業に携わりたい

法的アドバイスをするだけでなく、「事業を創り上げたい」「ビジネスに携わりたい」という思いで事業会社への転職を志す人もいます。 エリート弁護士からスマホアプリを提供するIT企業へ転職した木村氏はこのように語っています。

弁護士がインターネットビジネスをするなんてかなり唐突に聞こえるかもしれません。でもそれは今しか挑戦できないことなので、自分の信念に従って決断し、人生の舵を切ることとしました。

検察官(検事)から法律事務所へ転職したケースも

検察官(検事)から法律事務所へ転職するケースもあります。 検察官は「旬が短い」というのがその理由の1つです。 検察官は「独任制の官庁」と呼ばれているように、任官1年目でもすべての権限を持っています。 それが検察官の魅力の1つですが、検察官は15年目頃に管理職になることが多く、たとえ管理職になったとしてもそこまで仕事の幅が広がるわけではありません。 そのような背景から、管理職になるより「法律家としてのキャリアを広げたい」という思いで法律事務所に転職する人もいます。

まとめ

今回は弁護士が転職する理由についてご紹介しました。 ぜひご自身の転職の参考にしてみてください。