司法試験に受かっても職がない? 弁護士の就職難の嘘と実態

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「弁護士の就職難って本当なのだろうか?」

「弁護士になったのに職がないなんてことがあるのか?」

・・・という質問を受けることが最近多くなってきました。

そこで今回は、「弁護士の就職難の実態」と「弁護士の就職難は嘘だ、という意見について」、そして「若手弁護士が就職難を乗り切る方法」をご紹介します。

弁護士の就職難の実態は?

では実際に弁護士の就職難の実態はどのようになっているのでしょうか?

2015年5月の日本経済新聞の記事「新人弁護士、かすむ未来 事務所入っても少ない仕事」で、とある新人弁護士を例に就職難の実態が紹介されています。

借金をして法科大学院に通いやっとの思いで司法試験に合格したが、なんとか就職できたのは小さな法律事務所。 月の給料は20万円台で歩合給はなく、個人で仕事を請け負うのも禁止。 その他にも問題があり退職したものの、「コネが命」といわれる弁護士業界では人脈がないとなかなか仕事にはありつけない上に、奨学金や司法修習中の借り入れおよそ1,000万円はまだ残っている。

その新人弁護士の男性は、

「周囲を見ても、厳しい環境で我慢して働いている若手弁護士は多い」 「自分が弁護士になれたのは司法制度改革で司法試験の合格者が増えた恩恵だが、仕事もないのに弁護士を増やしすぎている」

と厳しい現状を語っています。

2012年4月の日本経済新聞の記事「弁護士、深刻さ増す就職難 日弁連は勧告歓迎」では、 「新人弁護士の厳しい就職状況を鑑みて、一般企業に就職することにした」 「60以上の法律事務所を受けて、ようやく内定をもらえたのは1つ」 という声が紹介されています。

その他にも、 「法律事務所の採用数が少ない」 「年収300万円以下の弁護士も珍しくない」 「収入があるだけまだマシ」 「“即独”や“ノキ弁”にならざるを得ない弁護士も多数」 「実入りのいい仕事は古参弁護士が独占」 「司法研修所での生活費が借金になっているケースが大半で、さらに弁護士会費等が毎月5万円かかる」 「法学部、法科大学院の人気が低迷、定員30人に入学者3人というケースも」 という厳しい現状を訴える声が挙がっています。

この厳しい弁護士の就職難の背景には、2002年に閣議決定された法曹3000人計画に端を発した「弁護士過剰問題」があるようです。

弁護士の就職難は嘘? 都市伝説?

一方で、「弁護士の就職難は嘘だ」という意見もあります。

2015年6月の東洋経済オンラインの記事「データで検証!「弁護士は食えない」のウソ」では、法律事務所に就職した若手弁護士に「法科大学院の同級生や司法修習の同期にこの定説(就職難や低収入、多額の負債など)を地で行くような弁護士がいるか」と聞くと、 「少なくとも自分が知る範囲では心当たりがない」 「かわいそうだの、食えてないだの言われるのは心外だ」 という答えが返ってくると紹介されています。

詳しくは上記の記事を参照していただきますが、弁護士の厳しい実態を裏付けるとされる統計を検証し、「弁護士の就職難」に対するさまざまな反論を行っています。

その他にも、

「法律事務所のみの求人倍率は概ね0.7~0.8倍と1倍を割る水準。このところ求人を増やしている企業の法務部も含めれば、求人倍率は軽く1倍を超えてくる。法律事務所以外はイヤという人を除けば、むしろ売り手市場だ」 「就職以外にもOJTの機会を得るチャンスはある。弁護士会活動に積極的に参加すれば、即独でも上の世代の弁護士と知り合えて下請け仕事をもらう機会もある。労働環境が劣悪なブラック事務所に就職するくらいなら即独や早独の方がマシ」(65期の弁護士)

という意見が紹介されています。

しかしながら、さらに一方では「弁護士の就職難に対する反論」への反論もあります。

弁護士の武本夕香子先生はご自身のブログでこのように指摘されています。

彼らに言わせれば、「弁護士を募集しても応募がない」と嘆く弁護士もいるのだそうで、弁護士の就職難は「都市伝説」、就職難の根拠とされる数字には「マジック」があり、「登録抹消」の実態には裏があるとのことのようです。「そもそも、弁護士は就職する必要があるのかという疑問もあ」るのだそうで、「司法研修所を出ているのですから、「就職しないと仕事ができないというのもおかしなお話」なのだそうです。   「弁護士を募集しても応募がない」と言う弁護士が存在したとして、だからと言って弁護士の就職難が存在しないとの結論を導けるわけではありません。 大半の弁護士が「経費削減のため弁護士を辞めさせることはあっても新人弁護士を募集する余裕はない」「弁護士を1名募集すると、100名以上集まってくるので困る」「修習生があまりにも気の毒で、就職の話題はタブーである」等々と言っていますが、中には、「弁護士を募集しても応募がない」との稀有な弁護士がいることもあり得るからです。 ただ、もし、「弁護士を募集しても応募がない」と嘆く弁護士を見つけたら、即刻、弁護士会に情報提供して戴きたいと思います。どこの単位会も就職先のない修習生で溢れかえっているからです。

そして先日行われた就職説明会では、100名近い修習生に対して、法律事務所が6つ、法務人材の採用を希望する一般企業が2つというお寒い状況であったことを紹介。

また司法改革以前は「弁護士会費を節約するために弁護士登録を遅らせる」こと自体がなかったこと、つまり、「経費節減(かつてはそんな発想自体なかった)のために登録を遅らせる」ということ自体が弁護士の需要のなさを物語っていると指摘されています。

その他にも、 「「結局は就職できているではないか」という主張が盛んにされているが、弁護士過剰の中で新人弁護士は旧司法試験時代よりもはるかに希望条件を下げて就職しているので、そのような主張は妥当ではない」 という意見が散見されました。

新人弁護士が就職難を乗り切るには?

「就職難」「稼げない」といわれるこの厳しい状況を新人弁護士が乗り切るにはどうしたらいいでしょうか?

新人弁護士が就職難を乗り切る方法を2つご紹介します。

(1)法律事務所に登録だけさせてもらう

法律事務所に就職できなかった場合は、法律事務所に弁護士として登録だけさせてもらうのも1つの方法です。

いわゆる「ノキ弁(軒先弁護士)」で、事務所のスペースを間借りして弁護士業務を行います。

まれに法律事務所のおこぼれ仕事をもらえることもありますが、独立扱いなのでノキ弁に給料はなく、自分で顧客を探して収入を得なくてはなりません。

またその収入の中から法律事務所の賃料などの経費を払う必要があります。

(2)地方弁護士になる

この就職難を生き残るには、「地方弁護士」が狙い目です。 弁護士の就職難はみんなが都心の法律事務所を希望しているからであって、「場所を選ばなければ十分に稼げる」といわれています。

都心ではそこらじゅうに法律事務所の看板を見かけますが、地方では一番近くの弁護士に会うだけでも車で何十分もかかるということはザラです。

田舎暮らしに問題がなければ就職先はいくらでも見つかるでしょう。

まとめ

今回は「弁護士の就職難」を掘り下げてみました。

いくら「就職難、稼げない」といわれても、弁護士は社会にとって必要不可欠な存在です。

ぜひあなたに最善な職場や働き方を見つけていきましょう。