法律事務所? 企業内弁護士? 「年収」から考える弁護士の転職
近年、積極的に企業内弁護士(インハウスローヤー)などの法務人材の中途採用を行う一般企業が増えています。
その背景には、事業拡大や海外展開などの業務内容の高度化、法改正への対応の増加などがあります。
法務職は専門性が高く中途採用に頼らざるを得ないため、事業会社への転職を考えている弁護士の方にとっては好機となっています。
では実際に転職活動を開始するにあたって、気になることの1つに「年収」があると思います。
そこで今回は、転職の際に気になる「弁護士の年収」にフォーカスして掘り下げていきます。
また「法律事務所勤務と企業内弁護士、転職するならどちらがいいのか?」ということについても比較検討していきます。
弁護士の平均年収(2014年調べ)
こちらは日本弁護士連合会(日弁連)が2014年に実施した「弁護士実勢調査(弁護士センサス)」から得た回答結果です。
上記の図のように「弁護士の平均年収」は、
・200万円未満:221人
・200万円以上500万円未満:238人
・500万円以上750万円未満:386人
・750万円以上1,000万円未満:291人
・1,000万円以上1,500万円未満:490人
・1,500万円以上2,000万円未満:319人
・2,000万円以上3,000万円未満:494人
・3,000万円以上5,000万円未満:422人
・5,000万円以上7,500万円未満:187人
・7,500万円以上1億円未満:63人
・1億円以上:88人
となっています。
弁護士の平均年収で多いのは、上から順に「2,000万円以上3,000万円未満:494人」「1,000万円以上1,500万円未満:490人」「3,000万円以上5,000万円未満:422人」ということがわかります。
弁護士の平均年収【年度別】(2014年調べ)
こちらも日本弁護士連合会(日弁連)が2014年に実施した「弁護士実勢調査(弁護士センサス)」による「年度別の弁護士の平均年収の推移」です。
上記の図のように「年度別の弁護士の平均年収」は、
・2006年:3620万円
・2008年:3389万円
・2010年:3304万円
・2014年:2402万円
となっています。
弁護士の平均年収は依然高い水準にありますが、年々下降傾向にあることがわかります。
弁護士の平均年収低下の背景には、弁護士の急増による就職難や、「ノキ弁」「即独」「携弁」など働き方の多様化により低収入の弁護士が増えたことなどが挙げられます。
しかし上記のように弁護士の平均年収は依然高い水準にあるので、高収入の弁護士と低収入の弁護士の2つに大きく分かれるようになってきているのが現状でしょう。
弁護士の平均年収【経験年数別】 (2014年調べ)
上記の図のように「経験年数別の弁護士の平均年収」は、
・5年未満:796万円
・5年以上10年未満:1679万円
・10年以上15年未満:2285万円
・15年以上20年未満:2971万円
・20年以上25年未満:4101万円
・25年以上30年未満:4290万円
・30年以上35年未満:4750万円
・35年以上:3413万円
となっています。
経験年数を重ねるごとに年収は上がっていき、30年以上35年未満の4750万円がピークになっています。
企業内弁護士の平均年収(2016年調べ)
こちらは日本組織内弁護士協会(JILA)が2016年に実施したアンケート調査の回答結果です。
上記の図のように「企業内弁護士の平均年収」は、
・250万円未満:0%
・250万円以上500万円未満:9.6%
・500万円以上750万円未満:30.5%
・750万円以上1,000万円未満:24.1%
・1,000万円以上1,250万円未満:12%
・1,250万円以上1,500万円未満:9.4%
・1,500万円以上2,000万円未満:6.1%
・2,000万円以上3,000万円未満:3.7%
・3,000万円以上5,000万円未満:1.6%
・5,000万円以上:2.9%
となっています。
500万円以上750万円未満が30.5%、750万円以上1,000万円未満が24.1%と、500万円〜1,000万円の年収範囲が一番多くなっています。
ちなみに企業内弁護士の平均年収は1,143万円となっています。(2016年調べ)
法律事務所勤務と企業内弁護士、年収を基準に転職を考えるなら?
法律事務所勤務の弁護士の場合、企業法務を扱う事務所なのか、知財や一般民事案件を主に扱う事務所かなど、法人によって給与体系は大きく異なります。
またパートナーになれるかどうかでも収入が大きく変わってきます。
一般企業に勤める企業内弁護士の場合、法律事務所勤務の弁護士よりも平均年収は低い水準にあります。
しかし法律事務所よりも法人による年収の差が少なく、法務人材の採用を強化しているのは上場企業などの大手企業が多いため、福利厚生や賃金制度がしっかり整備されています。
弁護士全体の内、4.5%が企業内弁護士といわれていますが、年収以外にも「ワーク・ライフ・バランスの考慮」や「ビジネスに携わりたい」という理由で事業会社に転職することもあります。
また「弁護士ならではの仕事がしたい」のか「ビジネスの課題解決に取り組みたい」のかによっても、法律事務所を選ぶか企業内弁護士を選ぶかが変わってくるでしょう。